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資源循環(サーキュラーエコノミー)
関連するSDGs
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YKK APではYKKグループ環境ビジョン2050に基づき、事業活動による投入資材、現場資材の削減、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の3R活動※1、不良品発生抑制に取り組み、循環型社会の構築を目指します。
※1 リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3つのR(アール)の総称。
方針・考え方
社会的背景
今日、全地球的規模で大量生産、大量消費、大量廃棄が行われ、資源の枯渇、廃棄物処分場のひっ迫および周辺の汚染が環境問題として懸念されています。また近年、アジア各国の輸入規制による廃プラスチックの滞留、海洋プラスチックによる世界規模での環境汚染が浮き彫りになっています。
SDGsではターゲット12「つくる責任、つかう責任」において、持続的な生産消費の形態を確保していくことを資源循環に関わる計画として制定しています。
日本では、2000年に「循環型社会形成推進基本法」が制定され、資源の有効利用が進められています。さらに2022年4月からは「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行され、資源循環を促進するための仕組みづくりが進められています。
YKK APの目指す姿
リサイクルをせずに廃棄物を埋立処分することは埋立処分場残余年数を縮めることになります。YKK APでは廃棄物が複合物や混合物のような再利用していくことが難しいものであっても埋立処理とはせずリサイクルによる処理を進めています。今後は、投入資材、施工現場資材の削減、輸送時の不良品発生抑制に取り組みまた、サーキュラーエコノミーの考え方に基づき社内で発生する不要物を最大限有効利用していくことで排出量を抑制し循環型社会の構築に寄与することを目指します。
環境長期ビジョン
YKK APは廃棄物を排出する事業者の責務として製造工程にて投入する資材の削減、商品施工工法の見直しによる現場資材の削減、輸送による不良品発生抑制と、排出物のリサイクル、廃棄物の削減のため発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)に取り組み、環境負荷の低減を進めています。
中長期計画
action1 リサイクル率の向上と維持
廃棄物のリサイクル処理を継続し、2024年までに国内・海外製造拠点のリサイクル率99%以上を目指す。
action2 廃棄物の削減
2024年までに国内・海外製造拠点の廃棄物17%削減を目指す。
action3 商品への投入資材削減と再生材活用
包装資材、商品施工において投入資材を削減する。
樹脂商品のPVCリサイクル材使用率を向上させる。
YKK APにおけるリスクと機会
リスク | ・産業廃棄物処理に関わる法令違反、不適正処理による社会的信用の失墜 ・廃棄物処理先の減少による処理費用の高騰 ・商品の輸送不具合による不良品返品発生 |
---|---|
機会 | ・廃棄物に係るコンプライアンス順守の維持による安定した事業活動の継続 ・埋立廃棄物量削減による最終処分場のひっ迫回避への貢献(地球環境負荷低減) ・廃棄物のリサイクルとリサイクル材の使用による循環型社会構築への貢献 ・製造工程における投入資材と排出物の抑制によるコスト削減と環境負荷の低減 ・商品施工技術の進展による品質向上と現場資材の削減 |
2023年度の総括と今後の展開
action1 リサイクル率の向上と維持
YKK APのゼロエミッションの定義は「事業活動に伴って発⽣する排出物※2のリサイクル率※3を97%以上にすること」としています。
■リサイクル率向上への取り組み
これまで単純焼却・埋立処分となる産業廃棄物の排出状況を調査しリサイクルへの転換を進めてきました。
2023年度国内製造拠点のリサイクル率は100%でゼロエミッションを達成しています。これで2005年度から19年連続でゼロエミッションを達成しております。海外製造拠点においてはダブリン工場、蘇州社、ボルーカ社において汚泥の増加によりリサイクル率88%です。
汚泥、廃棄物をリサイクルへ転換することでリサイクル率向上を目指していきます。
※2 有価物、再資源化廃棄物、単純焼却・埋立廃棄物を合わせたもの。
※3 リサイクル率は以下の式で算出しています。
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《言葉の定義》
有価物量:自ら利用する予定がないが価値があり、売却できるもの
再資源化廃棄物量:自ら利用する予定がなく何らかの原材料や熱源として利用されるもの
単純焼却・埋立廃棄物量:原材料、熱源として、利用されず焼却または埋立処理されるもの
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action2 廃棄物の削減 YKK APグループ(国内+海外製造拠点)
テーマ | 基準年度 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2024年度計画 |
---|---|---|---|---|
廃棄物原単位※4の削減(国内+海外製造拠点) | 2016年度 | 排出量 26%削減 原単位 40%削減 |
排出量 15%削減 原単位 35%削減 |
排出量 17%削減 原単位 48%削減 |
※4 売上高当たりの廃棄物排出量
■廃棄物削減への取り組み
国内製造拠点:
2023年度は複層ガラスの生産増加により1,149t(2022年度比)増加となりました。
2024年度は複層ガラスの不良低減、ガラス屑の有価物化により829t(2023年度比)削減を見込んでいます。
廃棄物の状態、排出状況を検証し、混合廃棄物の選別等、ひと手間かけて有価物化することに引き続き取り組み廃棄物排出量抑制に努めます。
海外製造拠点:
2023年度は中国社、インドネシア社、ボルーカ社にて増加し804t(2022年度比)増加となりました。
2024年度は製品生産業の増加により427t(2023年度比)増加が見込まれています。
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廃プラスチック排出量 YKK APグループ(国内製造拠点)
2023年度国内製造拠点では廃棄物を10.5千t排出しています。そのうち、廃プラスチックが占める量は1.9千t(18%)あります。
2023年度は廃プラスチックをRPF原材料に活用、使用済み包装資材の有価物化を進めたことにより4%減少となりました。
2024年度は製品生産量増加のため2023年度比4%増加となりますが、RPF原材料対象範囲の拡大、包装資材更なるリターナブル化により廃プラスチック削減を目指します。
2019実績 | 2020実績 | 2021実績 | 2022実績 | 2023実績 | 2024計画 | |
---|---|---|---|---|---|---|
排出量 | 2.4千t | 2.1千t | 2.3千t | 1.9千t | 1.9千t | 1.9千t |
商品
廃棄物の削減とリサイクル
YKK APでは商品を出荷した後、流通過程、使用中、使用後に発生する環境負荷が最小限となるよう資源循環を考慮した商品の開発、環境負荷の低い商品を提供する仕組みの構築に取り組んでいます。
サーキューラーエコノミー
商品のライフサイクルを通じて廃棄物の発生を抑制するため、廃棄物発生要因を分析し、サーキュラーエコノミーの概念を取り入れ持続可能な資源の利用を進めてます。
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アルミニウム投入資材の削減とリサイクル
窓やカーテンウォール、カーポートやエクステリア商品などYKK APの商品の素材にアルミニウムを使用しています。アルミニウムは地金を新造するのに比べるとリサイクルする際に使用するエネルギーが少ない金属です。
YKK APでは社内の製造過程で生じる端材(社内リターン材)は既に100%を達成しており、現在は使用済みアルミサッシやタイヤホイールなどの市中リサイクル材を活用し社外品リサイクルの割合を高める取り組みを進めています。
また、カーボンニュートラルへ貢献することを目的として米国ではボーキサイトから精錬される段階でグリーンエネルギーを活用した「グリーンアルミ」の調達も進め、中国、インドネシア、インドでもそれぞれの国や地域に合わせた取り組みを加速しています。
市中リサイクル材の投入を増やすため、四国製造所ではアルミ鋳造設備の再構築に着手しリサイクル炉を導入し2023年9月、稼働を開始しました。
社外品リサイクリル率は2023年度33%を達成しました。2024年度は41%を目指し、今後、黒部製造所、東北製造所、九州製造所へリサイクル炉導入を進め、2030年度100%を目指していきます。
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市中リサイクル材
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四国製造所 リサイクル炉
カーボンニュートラル実現に向けて - 窓メーカーによるアルミリサイクル率100%への挑戦
樹脂投入資材の削減とリサイクル
樹脂フレーム材、樹脂窓の製造工程では効率的な生産により樹脂端材、切粉の発生抑制に努めています。発生した端材、切粉については再び資源として樹脂材へ再生させ、そのリサイクル率の向上に取り組んでいます。また、樹脂端材の新規用途の開発も積極的に行っています。2019年度より樹脂端材を再生し複層ガラスのガスケット原材料や樹脂窓のフレーム材とすることを開始しました。これらにより社内リサイクル率(端材再利用)は2023年度末の時点で45%達成しています。リサイクル設備の新規導入、新規用途開発により今後2024年度末までに100%を目指していきます。
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(左)樹脂窓の製造過程で発生する樹脂端材 (右)樹脂端材から得た再生原料を使用した樹脂形材(灰色部分がリサイクル材)
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YKK APは環境省が展開するキャンペーン「プラスチックスマート」に賛同し、弊社の取り組み事例2件をご紹介いただいています。
使用済み樹脂窓のリサイクル実現に向けて業界団体を中心に組織された「樹脂窓リサイクル検討委員会」にYKK APは、委員として参画しています。同会では施工され使用後の樹脂窓を回収・リサイクルするシステムの構築に向けて産官学連携で取り組みを進めています。同会で2024年1月に「樹脂窓リサイクルビジョン」を発表しています。
YKK APは樹脂窓メーカーとして主体的に樹脂窓リサイクルの取り組みを加速させ、他社製品も含めた使用済み樹脂窓由来の再生原料を使用した”マドtoマド”リサイクルによる商品の2024年度中の実用化を目指します。
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樹脂窓リサイクル検討委員会 定例会の様子
STOP! 使用済み樹脂窓の埋立処分。産官学連携による「樹脂窓リサイクルビジョン」の発信と”マドtoマド”リサイクルへの挑戦
包装資材の削減
輸送する商品、部品、原材料に応じて、環境負荷の少ない適正な包装となるよう取り組んでいます。
社内拠点間、ルート配送等、定常的な輸送については固縛シートなど再利用できる包装形態への切替を進めていきます。
ワンウェイとなる輸送の場合は包装資材の種類ごとに(きず、へこみなど防止のため)必要最小限の包装とし使用量を減らしていきます。マイクロプラスチック※5をはじめとした海洋プラスチック問題も考慮の上、包装資材に関わる環境負荷軽減に取り組んでいきます。
・包装資材削減の考え方
3R + Renewable | 取り組み事項・検討事項 |
---|---|
Reduce 減らす |
簡易包装による最小限の包装へ |
Reuse 再利用 |
通箱、パレット、固縛シート等を回収し再び使用 |
Recycle 再生利用 |
再生原料を使用した包装資材へ切替 |
Renewable 再生可能資源利用 |
バイオプラスチックを原材料とする包装資材へ切替 |
■商品輸送時の包装改善例
(これまで)
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ストレッチフィルムを巻いてパレットごと商品を固縛。
ストレッチフィルムは一度限りの利用。
(切り替え後)
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繰り返し利用できる包装資材「固縛シート」を開発。
商品輸送後、回収し再利用。意匠登録:1696845
2023年度 社内拠点間商品輸送の66%に適用。
※5 直径5mm以下の微細なプラスチックのごみ。ストローや食器、レジ袋などの廃棄されたプラスチックごみが海の中で分解され、プランクトンや魚貝類、海洋生物の体内に蓄積されるなどさまざまな影響が出てきていると言われています。行政や大学等でも実態調査や対策に向けた取り組みが進められています。(樹脂窓は社内外で適正に管理、リサイクルされています。)
施工技術による省力化・乾式化の推進
商品施工技術の進展(省力化・乾式化による施工品質の向上)
少子高齢化の影響により建設業界でも高齢化と人手不足が進む中、施工現場では熟練技術を必要としないシンプルな商品や技術の需要が高まっています。
YKK APでは、省施工化や乾式施工化など、新しい施工技術の開発及び普及の促進に取り組み、工期の短縮や現場資材の削減を進めるとともに、施工品質の向上を実現します。
カバー工法への取り組み 「かんたん マドリモ」
既存の窓枠を取り壊すことなく、新しい窓とドアをかぶせて取り付けるカバー工法を採用した窓のリフォーム商品です。従来の工法では、壁まで取り壊す工事によって、騒音や粉塵が発生するとともに工期が長く、コストアップにもつながっていました。
しかし、新しい窓をかぶせて取り付ける「かんたん マドリモ」のカバー工法によって、足場などの無駄なコストを省けるとともに1窓あたり約半日で施工が完了するメリットがあります。それにより、従来工法よりも施工技能者の拘束時間を短くすることが可能となり、人手不足の中にあってもスムーズな施工が可能となります。
また、従来のカバー工法では、既存枠と新設枠の隙間にシーリング材を注入しなければならず、施工技能者の力量が影響していました。しかし、「かんたん マドリモ」では、気密シートを貼り付けるだけの「ノンシールカバー工法」を採用しているため、個人の施工技術に影響されずに施工品質を保つことができます。工期の短縮と施工技能者の作業負担を実現しながらも施工品質の確保を実現する工法になっています。
乾式化への取り組み 「ソラリア」
テラス・バルコニー向け商品「ソラリア」囲いでは、ねじの種類を半分に、使用する本数を4分の3に抑えています。また、シーリング箇所を集約するとともに集水部品まわりの乾式化によってシーリングの使用量を20%削減しました。
従来の商品に比べ、施工時間の短縮と品質向上を実現しています。
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「ソラリア」屋根 施工イメージ
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「ソラリア」囲い 施工イメージ
■優れた施工性と完成品質の向上
YKK APでは熟練工の高齢化などによる職人不足に配慮した、省施工化を進めています。
「ソラリア」囲いの場合では、ねじ種類を半減、ねじ本数を約25%削減、防水シーリングの使用量を屋根まわりにおいて約45%削減※6。また、「ソラリア」屋根の場合では、ドレイン(集水部品)まわりの乾式化によりシーリング箇所の削減を行い、屋根・囲い共に施工性の向上を図っています。
その結果、従来に比べた施工時間の短縮と、完成品質の向上を実現しています。
※6:対積雪強度20cm 関東間2間×6尺 R型 下から施工 開口部を除いた仕様において
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「ソラリア」囲いに使用する
シーリング使用量比較
非溶接工法への取り組み 「ビル用サッシ 非溶接工法」
モルタルを充填する湿式施工で、従来の溶接工法に替わる新しいサッシ施工の工法です。溶接の代わりに材料の硬化を利用した樹脂材を充填し、サッシ本体と駆体を固定します。溶接作業に必要な電源の確保が不要になるだけでなく、火気を使用しないため防火対策や、火花養生の工程の省略にもつながります。また天候に影響されずに施工することができるため、工期の安定にも貢献します。
モノづくり
RPFの製造
廃棄物をひと手間かけ価値のあるものへ再生することで弊社内で発生する廃棄物削減を進めています。
廃プラスチック、紙くずはそのままであれば、廃棄物となりますが、RPFを製造することにより価値のあるものに生まれ変わります。
2023年度は投入する廃棄物(原材料)の組み合わせを拡大し212t/年RPFを製造しました。
「2050年までに環境負荷ゼロを目指すYKK APの”攻める環境管理”による資源純化のアクションとは」
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RPF製造設備(黒部越湖製造所)
有価物化への取り組み
ガラスくず等、廃棄物はリサイクルで処理され、原材料として再生となりますが、更に有価物化することにより廃棄物削減を進めています。
廃棄物の排出から、収集運搬、処分までマテリアルフロー全体で捉え、処理が適正であるか、効率化できないか検証し有価物化を進めていきます。
廃プラスチック類の分別回収
廃プラスチック類は外見だけでは材質が分からないため、混ぜてしまうとサーマルリサイクルでの処理となります。そのため、YKK APでは、製造ラインでの材質ごとの分別の徹底を進めています。各製造拠点ではプラスチックを部材、包装資材の種類、材質、色ごとに分別回収し、有価売却またはマテリアルリサイクルを行っています。
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黒部越湖製造所 分別回収
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九州製造所 分別回収
木粉の有価物化
富山水橋工場では木質インテリア製品を製造しています。原材料のMDFを切断する際、木粉が発生します。木粉は飛散するため取り扱いに難があり、廃棄物として処理をしていました。
木粉をペレット化するための製造設備(ペレタイザー)を導入し、2023年度は501t有価売却しました。
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破砕機の導入
樹脂端材リサイクルの効率化を図るため、各拠点に破砕機の導入を進めています。破砕により形状の均一化を図ることで、運搬時の積載効率を向上するとともに、社内リサイクル、排出先での取り扱いが容易になりました。
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チップ状にした樹脂端材
運送業者への教育
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運送業者への教育
YKK APでは運送を依頼している運送業者49社の管理者およびドライバー1,252名を対象に、荷扱い教育・安全教育・環境教育を、コロナ禍の影響を受けて20年度から継続して通常の集合教育に代わり、ソーシャルディスタンスを維持できる分散教育に変えるなど工夫をして実施しました。
輸送上の不具合による不良返品削減活動を強化することで廃棄物削減に継続的に取り組んでおり、2023年度は前年に比べ、不良返品率を7ポイント削減することができました。
今後も、取引先関係業者とともに、環境意識の向上に努めていきます。