生物多様性
関連するSDGs
YKK APでは、YKKグループ環境ビジョンで掲げている「自然との共生」に向け、事業活動のライフサイクルにおいて、生物多様性の損失、影響、負荷を最小限にするための取り組みを推進しています。
社会的背景/YKK APの目指す姿
社会的背景
1992年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれた地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)において、「気候変動枠組条約」と共に「生物多様性条約」が国際条約として合意されました。「気候変動枠組条約」では企業から多量の温室効果ガスが排出されていることから、早くから各企業は排出量の削減などに取り組んできました。一方、「生物多様性条約」では企業との関係が見え難いことから、国や自治体が主に取り組んできました。しかし、2010年名古屋で開かれたCOP10に向けて作成された報告書「生物多様性と経済学」において、生物資源や土地の利用、水や大気の浄化など、企業は生態系から多大な恩恵を受けており、生物多様性の損失は重大な経済危機を招く危険性があることが報告されました。これを受け、一部の金融機関の中では生物多様性に関連したファイナンスの取り扱いを始めました。また、生物多様性の浸透に伴い、消費者の企業に対する期待は年々高まると共に、監視の目も厳しくなってきています。2022年12月には生物多様性条約第15回締約国会議(COP15第2部)が開催され、2050年までの長期目標「自然と共生する世界」に向け30by30目標(2030年までに30%以上の陸域、海域の保全)などが採択されました。
また、SDGsの達成に生物多様性は深くかかわっており、解決すべき課題の明確化が求められています。
YKK APの目指す姿
YKK APの事業活動も生物多様性の恩恵を受けて成り立っています。事業活動の中で生物多様性へプラスとなる取り組みを進めると共に、マイナスとなる影響をできる限り小さくしていくことで、持続可能な社会づくりへ貢献していきます。多くの課題の中でも「自然との共生」を意識し、有害性の高い化学物質の使用、排出を削減し、安心・安全な商品の提供及び周辺環境との調和を目指して行きます。
事業活動と生物多様性の関わり
地域の自然と調和する工場の実現
以下の各段階においてそれぞれガイドライン、指針を設け、生物多様性への影響を最小化します。
調達段階 | 調達先に対して、「YKK APグリーン調達ガイドライン」「YKK AP化学物質管理指針」 を配付、CSRアンケート(環境に関する項目を含む)を実施し、環境に対する取り組み状況を確認 |
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開発段階 | 製品構成材料中の有害化学物質含有チェックおよび再生・持続可能な資源の利用を推進 |
製造段階 | 製造で使用する有害化学物質の削減、外部への排出を抑制 |
使用、廃棄段階 | 地球環境負荷を低減するエコプロダクツの拡販、普及 |
環境長期ビジョン
YKK APでは、生物多様性条約における国際戦略並びに第10回締約国会議(COP10)における戦略計画2011-2020と愛知目標を踏まえ、2050年までに「自然と共生する世界」を実現するためグリーン調達の実施、有害物質の使用・排出の削減、環境負荷低減商品の開発、提供を行います。
YKK APにおけるリスクと機会
短期 | 長期 | |
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リスク | 工場からの有害物質の排出等による周辺生態系の影響 | 工場周辺の開発による緑地の減少、自然環境の破壊などによる周辺環境や生態系への影響 化学物質摂取による健康被害 |
機会 | 環境配慮型商品の開発、販売、拡販 | サプライチェーンを含む生物多様性活動の推進による地球環境負荷低減、事業活動の継続 |
2023年度の総括と今後の展開
2023年度の取り組みと課題
【評価】○:達成、△:一部未達、✕:大幅未達
※表の見切れている部分は横にスライドしてご覧になれます。テーマ | 目標・活動内容 | 2023年度実績 | 今後の課題 |
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PRTR法対象物質の排出量削減 (YKK AP 単体) |
国内工場の化学物質の使用量および排出・移動量を把握、削減の実施 | 2013年度比 32%削減 (改正前) |
更なる削減、代替化技術の調査、検討 |
商品の六価クロムフリー | サプライヤーへのヒアリングの実施 品質試験の実施 |
○ | サプライチェーンとの情報共有、連携強化 使用状況の把握、切り替え技術 |
緑化活動 | 国内外主要拠点で緑化活動を実施 | ○ | 周辺環境や生態系への影響 |
商品
化学物質管理
商品の六価クロムフリー
有害化学物質代替化の取り組みの一つとして、六価クロムフリーに取り組んでいます。従来六価クロムを含む薬剤を用いる化成皮膜処理は高い性能・安定性を持つため広く採用されていました。しかし人体への有害性、環境負荷の観点から削減の取り組みが行われています。YKK APでは材料、部材、部品を六価クロムフリー化することを目標としております。部品についてはサプライヤーにヒアリングを行い、切替対象数を把握するため部品サプライヤーへ含有状況調査を実施しました。調査結果より外作部品の六価クロム含有状況を把握・分析し、六価クロムフリーへの切替に向け調整を行っております。
モノづくり
自然との共生
PRTR法※1対象物質の環境排出量削減(YKK AP単体)
YKK APでは国内工場の化学物質の使用量および排出・移動量を把握し、削減に取り組んでいます。
PRTRの改正(2023年4月施行)により、2023年度から集計対象物質が462物質から515物質に増加し、新たに対象となった物質(以降改正後物質)を含めて実績を把握しています。
2023年度の排出量は、法改正前の物質(以降改正前物質)で50tで、2013年度73tに対して32%削減となりました。
その結果、2023年度の排出実績は改正前物質で2022年度と比較した場合では4ポイント改善し、総排出量も2t減少しました。
改正後物質を含めると排出量は73t(改正前物質:約50t、改正後物質:約23t)となります。
今後も引き続き、適正な管理・削減を進めてまいります。
※1 特定化学物質の環境への排出量等及び管理の改善の促進に関する法律
汚染の予防について(大気)
YKKAPでは生産時に発生する大気汚染物質について把握を行っております。
ばい煙発生施設からの排ガスについては定期的な分析より把握しており、過去の実績から統計的に自主管理基準を設定し汚染の防止に努めています。詳細なデータについては「環境データ」に記載してあります。
緑化活動の推進
海外を含む各拠点において植樹等を行い、工場や周辺地域の緑化整備を実施しています。
今後もこの取り組みを続け、緑豊かな地域環境を次世代につないでいきます。
「社会貢献活動」の詳細はこちらをご覧ください
海の豊かさを守る活動
海洋ごみを減らすためには、海だけではなく、陸(街)から川を伝って海に流れ出るごみを防ぐことも重要だと言われています。
YKK APでは「海ごみゼロウィーク※3」に賛同し、2023年9月24日~10月24日に開催した「SDGs月間※4」にあわせて、海の未来を守ることを目指して清掃活動を実施しました。国内・海外の各拠点や部署において、最寄りの海岸・河川、拠点周辺の道路・公共施設の清掃のほか、自治体の清掃イベントへの参加、個人ボランティアなど、さまざまな方法で取り組みました。1ヵ月間の合計で42拠点・3,175名の社員が清掃活動に参加し、可燃ごみ・不燃ごみを合わせて1,849袋を回収しました。
※3 日本財団と環境省が共同で推進する海洋ごみ削減のための清掃活動であり、強化期間には「海ごみゼロウィーク」として全国一斉清掃キャンペーンが行われています。
※4 YKK APでは、毎年9月24日(清掃の日)からの1か月間に「SDGs月間」を開催し、SDGs達成に向けた取り組みを強化しています。