気候変動(カーボンニュートラル実現に向けて)

関連するSDGs

気候変動に具体的な対策を エネルギーをみんなにそしてクリーンに 産業と技術革新の基盤をつくろう 住み続けられるまちづくりを つくる責任 つかう責任 パートナーシップで目標を達成しよう

 世界的にカーボンニュートラルに対する意識が高まる中、YKK APは2050年実現に向けて、事業活動の全ての工程で温室効果ガスの削減や気候変動への適応に取り組んでいます。
 さらに達成年度の2040年への前倒しを目指し、「モノづくり」ではCO2削減に貢献する設備投資を加速します。

方針・考え方

社会的背景

 脱炭素・カーボンニュートラルの実現を目指すうえで、建築物におけるCO2削減も重点テーマとなっています。日本の建築物におけるエネルギー消費で大きなウェイトを占める冷暖房エネルギーの削減には、建物の外皮の断熱性能を高めるのが不可欠で、中でももっとも熱の出入りが大きい開口部(窓)の断熱性能をあげることが非常に重要になってきています。

 また、近年、猛暑や風水害の増加など、気候変動による影響が事業活動にとって大きなリスク・機会要因となっています。企業においては、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの拡大を通じて、化石燃料への依存を低減し、サプライチェーン全体で脱炭素社会への取り組みを推進すること、そして、2050年には温室効果ガス排出量を実質ゼロとすることが求められています。

YKK APの目指す姿

 YKK APは、高断熱窓の開発・販売・普及により、建築物のCO2排出量削減に貢献します。
 合わせて、調達から廃棄にわたるサプライチェーン全体のCO2排出量を最小化することにより、社会全体のカーボンニュートラルに貢献します。

環境長期ビジョン

 企業がパリ協定の「2℃⽬標」に整合した⻑期CO2削減⽬標を設定する仕組みとして、SBT(Science Based Targets)が国際的なイニシアチブによって運用されています。
 YKK APは、2030年50%削減(2013年度比)を目標に掲げ、SBTイニシアチブから認定を取得していますが、これを80%削減に上乗せします。さらにカーボンニュートラルも前倒しで2040年を目指します。
 この目標達成に向け、年率1.3%以上の省エネ、燃料転換、再⽣可能エネルギーの導⼊を主軸とした対策を⻑期にわたって推進します。

SCIENCE BASED TARGETS  DRIVING AMBITIOUS CORPORATE CLIMATE ACTION

 2021年6月に「カーボンニュートラルプロジェクト」を発足させました。副社長をプロジェクトリーダーに、若手技術者の参画による6つのワーキンググループを設け、各ワーキンググループでの取り組みを進めるとともにカーボンニュートラル技術ロードマップを策定しました。2030年度までにスコープ1、2では2013年比80%削減、スコープ3では同30%削減を目標に、商品とモノづくり、それぞれのプラットフォームを検討しながら、カーボンニュートラルに向けた技術開発を強化していきます。

YKK APのCO2削減目標と取り組みテーマ

※表の見切れている部分は横にスライドしてご覧になれます。
テーマ 基準年度 対象 2024年度計画 2030年度目標
【スコープ1※1+2※2
自社CO2排出量の削減
2013年度 YKK APグループ
(国内+海外)
36%削減 80%削減
【スコープ3※3
サプライチェーンCO2排出量の削減
2013年度 YKK APグループ
(国内+海外)
20%削減 30%削減
【商品使用時】
CO2削減貢献量の拡大
2020年度 YKK APグループ
(国内)
216%※4

※1 温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼)

※2 電気の使用に伴う間接排出

※3 スコープ1、スコープ2以外の間接排出(サプライチェーン)

※4 最新の2024年度計画に基づき算出

※最新のCO2排出係数に基づき、過去年度分も遡って修正

※最新のCO2排出係数に基づき、過去年度分も遡って修正

YKK APにおけるリスクと機会

リスク ・カーボンニュートラル等、社会的要請事項への対応遅れによる企業価値の喪失
・エネルギー資源枯渇によるコスト増大
機会 ・高断熱商品提供によるカーボンニュートラルへの貢献
・サステナブル商品の開発・提供による新たな付加価値の創出

2023年度の総括と今後の展開

 2023年度は、CO2削減貢献量は前年を上回ったものの計画には未達でしたが、CO2排出量については、生産設備更新や太陽光発電の稼働拡大により計画を達成しました。

※表の見切れている部分は横にスライドしてご覧になれます。
テーマ 基準年度 対象 2023年度計画 2023年度実績 2024年度計画
【スコープ1+2】
自社CO2排出量の削減
2013年度 YKK APグループ
(国内+海外)
33%削減 33%削減 36%削減
【商品使用時】
CO2削減貢献量の拡大
2020年度 YKK APグループ
(国内)
185% 173% 216%

※ 最新の2024年度計画に基づき算出

 個別データ、算定方法は「環境負荷情報」をご覧ください

商品

高断熱、換気、風水害対策商品

温室効果ガス削減に寄与する商品や気候変動対策商品の開発・販売

高断熱商品の開発(APW樹脂窓シリーズ)​

 地球規模でのエネルギー問題に直面している現在、可能な限りの省エネルギー化と、再生可能エネルギーの導入により、エネルギー消費量が「正味(ネット)ゼロ」となる住宅やビルの実現が求められています。​
 日本でも、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の建設促進に向け、国によるロードマップの策定や法整備が進められており、2030年には新たに建てられる建築物の平均でZEH・ZEBが実現することを目指しています。
 APW樹脂窓シリーズは、世界トップクラスの断熱性能を持つAPW 430をはじめ、シリーズを通して高い断熱性能を実現しています。窓から住宅を高断熱化することで、エネルギー消費の削減はもちろん、室内の温熱環境を改善し快適な住環境を提供いたします。​

CO2削減貢献量

 このように、断熱性能の高い窓を使用いただくことにより、従来のアルミ窓に比べ、窓からの熱の出入りを抑えることができ、住宅やオフィスのCO2の削減に貢献できます。窓やガラスの種類、およびその組み合わせによりエネルギー消費量の削減効果に差があり、住宅モデル家一棟あたりのアルミ窓(複層ガラス)のエネルギー消費量を100とした場合、下表のような断熱効果を試算しました。この効果に各年度にYKK APが販売した窓セット数を乗ずることにより、YKK APとしてのCO2削減貢献量を算出しております。​

※表の見切れている部分は横にスライドしてご覧になれます。
  住宅用窓(戸建て新築)
窓種 アルミ窓 複合窓 樹脂窓 樹脂窓
ガラス 複層ガラス 複層ガラス 複層ガラス トリプルガラス
断熱性能
低い → 高い
空調(冷暖房)によるエネルギー消費量 100
(基準)
95 85 76

【算出条件】
(日本LCA学会「温室効果ガス排出削減貢献量ガイドライン」に準拠)
断熱性の高い窓による、住宅の空調エネルギー削減効果(CO2削減効果)を「削減貢献量」として算出
●対象商品(サステナブル商品に準ずる)
 樹脂窓:「APW 430」、「APW 330」、「プラマードH」
 複合窓:「エピソードⅡ」、「APW 410」
 樹脂内窓:「マドリモ内窓プラマードU」
 断熱ドア:「イノベスト」、「ヴェナートD30」、「かんたん ドアリモ」、「コンコードS30」
 ビル断熱窓:「EXIMA37」、「EXIMA77」、「エピソードNEO-LB」
●従来商品
【新築】窓:アルミ複層、ドア:アルミドア
【改修】窓:アルミ単板
●使用期間:30年間(製品寿命)
●算出方法:窓1セット当たり削減貢献量×各年度出荷セット数
●空調エネルギーの削減効果算定方法

住宅用窓について上記のように算出し、住宅用ドアおよびビル用窓は同様の条件を独自に設定して算出した。

使用ソフト AE-Sim/Heat(建築の温熱環境シミュレーションプログラム)/株式会社 建築環境ソリューションズ
気象データ 「拡張アメダス気象データ」2000年版 標準年/(社)日本建築学会
計算地点 東京(6地域)
住宅モデル 「住宅事業建築主の判断の基準におけるエネルギー消費量計算方法の解説」の計算モデルに準拠
2階建て、延床面積:120.08m2、開口比率:26.8%(6地域)
住宅断熱仕様 次世代省エネルギー基準適合レベル
想定生活者 4人
想定冷暖房機器 エアコン COP:3.0
冷暖房設定 暖房:20℃、冷房:27℃(就寝時:28℃)・60%
トリプルガラス木製窓「APW 651」大開口スライディング

 窓事業ブランド「APW」シリーズとして、新たに国産桧の集成材を利用したトリプルガラス木製窓「APW 651」大開口スライディングを2024年7月に発売開始しました。
 再生可能資源である国産木材を使用し、木製ならではの上質感のある意匠性とトリプルガラス仕様による高い断熱性能を兼ね備え、樹脂窓と共に使用いただくことで住宅の更なる高意匠化・高断熱化を目指します。​

 脱炭素・カーボンニュートラルの実現に向けた家庭部門における温室効果ガス排出量の削減に向け、YKK APは、開口部の高断熱化を推進してきました。一方で、2022年に住宅性能表示制度において断熱等性能等級5・6・7が新設され、2030年には断熱等性能等級5が義務化予定の日本では今後ますます住宅の高断熱化が進んでいきます。これらの動きに対応するための新しいチャレンジとして、木製窓の開発に取組みました。
 YKK APは、日本の住宅における木製窓の普及と、断熱上位等級に対応した高断熱窓の拡充により、住宅の高断熱化を推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

SuMPO EPD

 SuMPO EPD(タイプⅢ環境宣言)は、一般社団法人サステナブル経営推進機構が管理し、LCA(ライフサイクルアセスメント)手法を用いて製品の全ライフサイクルステージにわたる環境情報を定量的に開示するものです。
 YKK APは2019年1月にビル用アルミ形材(中間財)、10月にビル用樹脂形材(中間財)でSuMPO EPDを取得しました。
 建築物による炭素排出量の影響を改善するため、建物の運用時に関連するオペレーショナルカーボン、および建設/維持管理/耐用年数終了まで建物の生涯を通じたエンボディドカーボンの両面から、LCAによる環境影響評価に取り組みます。
(2024年4月、従来の「エコリーフ」は「SuMPO EPD」へと名称変更しました。)​

気候変動への対策商品の開発(耐風シャッターGR)

 近年、日本に上陸する台風の大型化が進み、2018年の台風21号(瞬間最大風速58.1m/s)、2019年の台風15号(瞬間最大風速57.5m/s)は、各地に甚大な被害をもたらしました。
 そのような気候変動への対策として、耐風性能を高めた窓やシャッター、カーポートなどの開発に取り組んでいます。
 耐風シャッターGRは、風速62m/s時に風下側で発生する風に引っ張られる風圧力(負圧)に耐えることが可能な「耐風圧性能1200Pa」を確保し、標準シャッターに対して1.5倍の強度を実現しています。また、強風による飛来物の衝突性能として、重さ3kgの木材が時速55kmで衝突しても、シャッター部によって窓ガラスの割れを防ぎます。台風から窓を守るために必要なこの2つの性能を保持した耐風シャッターGRで防災・減災が可能です。​

■標準シャッターの2ランク上の耐風圧性能を実現

さまざまな技術と工夫により耐風圧1,200Paを実現。これは窓でいえば耐風圧2,400Paすなわち等級S-5に相当します。風速換算値は62m/sとなります。

換気効果を高める商品の情報発信

 新型コロナウイルスの感染防止対策を受けて、「換気」に対する関心が高まっています。換気とは室内の汚れた空気を排出して、室外の新鮮な空気を取り入れることです。
 YKK APでは、窓を閉めたままでも換気ができる機能や、玄関ドアを閉めたままでも換気ができる通風ドアなど、様々な換気機能を持つ商品の開発を進めています。また、季節に合わせた換気方法や、換気効率が高くなる窓えらび、通風のシミュレーションなど、換気に関する様々な情報を発信しています。​​​

通風・換気ができる機能のある商品例​​​

ヴェナートD30 通風デザイン

コンコードS30 通風デザイン

リモコンスリットシャッターGR

モノづくり

自社CO2排出量削減(スコープ1+2)、カーボンニュートラルの取り組み

 事業活動による自社からのCO2排出量の削減目標として、2030年までに2013年比80%削減と設定しました。そして、2040年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一環である「カーボンニュートラルプロジェクト」の6つのワークグループのうち「創エネWG」では、自社敷地内への自家消費型再生可能エネルギーの導入を推進しています。これまでに国内外9拠点に合計9,792kWの太陽光発電・小水力発電を導入しました(2023年度は年間5,400tのCO2削減に相当)。さらに、2024年度までに合計15,300kWまで創エネを拡大し、2020年度比7,900tのCO2の削減を目標に再生可能エネルギーの導入を加速します。
 また、オンサイト型太陽光発電エネルギーサービスの新たなスキームとなる「発電余剰電力融通型オンサイトPPA」の運用を2024年5月に開始し、埼玉工場新建屋で発電される再エネ電力を、埼玉工場旧建屋および埼玉窓工場へも託送供給することで、埼玉工場新建屋に設置された太陽光発電設備から供給される再エネ電力を100%有効活用する体制を整えました。今後の更なる再生可能エネルギー拡大に合わせて、複数拠点間での余剰電力の融通や蓄電池の活用により、再生可能エネルギーの最大限活用を推進していきます。

■太陽光発電設備導入拠点(2024年4月時点)

サプライチェーンCO2排出量削減(スコープ3)の取り組み

□サプライチェーンCO2排出量算定の取り組み

 YKK APは2013年度から毎年、環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」で算定の取り組み(目的・活用方法・算定方法・算定結果)を掲載しています。​​​

□購入した製品・サービスの取り組み

 YKK APのスコープ3におけるCO2排出量の9割近くを原材料調達が占め、特にアルミ窓のフレームに使用するアルミ地金の調達(採掘~精錬~海外輸送)の影響が高くなっています。アルミ再生地金の利用率を高めるとともに、樹脂窓の普及を推進することにより、サプライチェーン全体のCO2排出量を継続的に削減します。また、米国ではボーキサイトから精錬される段階でグリーンエネルギーを活用した「グリーンアルミ」の調達を進め、中国、インドネシア、インドでもそれぞれの国や地域に合わせた取り組みを加速しています。

□国内物流の取り組み

 YKK APは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推進する「ホワイト物流」推進運動に賛同し、持続可能な物流の実現に向けた自主行動宣言を事務局へ提出し、賛同企業として公表されています。この活動を通じ、物流の効率化や生産性向上に向けての取り組みをさらに推進します。
 同じく「ホワイト物流」推進運動賛同企業であるサントリーロジスティクス様と、2022年度よりお互いの荷量のアンマッチを解決する、異業種企業間の輸送共同化を実現させました。サントリーロジスティクス様の関西起点・東北行輸送を往路とし、同一車両の復路に対しYKKAP東北製造所起点・六甲窓工場行輸送の商品・フレーム材を積載することで、トラック台数・CO2・ドライバー必要数を削減しました。今後も他ルートへ展開するため、他社との協働を模索します。
 また、陸路輸送でダブル連結トラックを2023年度までに15台導入し、一度の輸送量が従来の1.8倍に向上しました。さらに輸送ルートの集約や端数荷物の合積みによる積載性向上といった「幹線リレー輸送」、「共同配送」や「隔日配送」などの二次配送、鉄道コンテナを利用するなどの「モーダルシフト」の導入により、CO2排出量を継続的に削減します。

YKK APの自主行動宣言内容

※表の見切れている部分は横にスライドしてご覧になれます。
No. 取組項目 取組内容
1 パレット等の活用 バラ積みからパレット積みの比率を上げ、荷役時間の削減を図ります
2 発荷主からの入出荷情報等の事前提供 入出荷日付情報を事前に提供することにより、荷さばき・検品作業の効率化を図ります
3 集荷先や配送先の集約 他社との共同配送を提案し、配送効率向上を図ります
4 納品日の集約 隔日配送化を推進し、配送回数の削減を図ります
5 異常気象時等の運行の中止・中断等 異常気象が発生した際やその発生が見込まれる際には、物流事業者と協議し、無理な運送依頼は行いません
6 車両の大型化 まとめ輸送により輸送回数の削減を図ります

積載効率向上のために導入したダブル連結トラック

□国際物流の取り組み

 商品・部品の輸出入において、積載効率を考慮した荷姿・包装設計、拠点最適化を行い、海上輸送コンテナ数の削減に取り組んでおります。
 YKK AP大連社、蘇州社では日本向け輸入コンテナ内の荷姿最適化に取り組んでおります。一例として樹脂フレーム材では、包装仕様・積載方法変更により該当アイテムのコンテナ数を52%削減しました。
 黒部製造所からYKKAP アメリカ社への設備輸出においては『デザイン・フォー・ロジスティクス』方針のもと、設備のモジュール化・分割設計、突起物取り外しと再組立容易化、荷姿設計の工夫などにより、輸出コンテナ数を20%削減しました。
 船便数の削減にも取り組んでおり、日本国内在庫拠点の再編によって同一商品の輸入コンテナ差し向け地の集約を進めております。

・大連樹脂フレーム材 積載方法変更

48本/パレット

100本/パレット