国土交通大臣認定の仕様に適合しない特定防火設備に係る未改修物件等への対応について
(特別調査委員会からの調査結果のご報告)
弊社は、2023年4月21日に発表した国土交通大臣認定の仕様に適合しない特定防火設備に係る未改修物件等への対応(以下、4月21日お知らせ)について、2023年8月31日付で特別調査委員会(以下、本調査委員会)を設置し、調査(以下、本調査)に全面的に協力して参りました。この度、本調査委員会による調査が完了しましたので、その結果について、下記の通りご報告いたします。
記
1 本調査の概要
(1)本調査の目的
本調査委員会は、4月21日お知らせにて公表したとおり、国土交通大臣認定の仕様に適合しない特定防火設備に係る未改修物件の存在が明らかになった件及び当該事案に関連する事実関係の調査、その原因究明及び再発防止策の提言(弊社において実施済みの再発防止策の評価を含む)を目的として、本調査を行いました。
本件は、2008年に取得した国土交通大臣認定(認定番号EA-0259。以下、2008年大臣認定)の取得の前提として申請した性能評価試験(以下、公的試験)において、スチール採光窓付玄関ドア(以下、本件ドア)の4区分のうち、1区分しか合格していなかったにもかかわらず、不合格となった3区分(以下、本件不合格3区分)を含む4区分全てについて大臣認定を取得したものと解釈し、本件不合格3区分の製品の改修を行わなかったという事案(以下、認定範囲誤認の件)になります。また、本調査委員会は、認定範囲誤認の件に関連して生じた、当該公的試験において申請仕様と異なる仕様で製作した試験体を用いて公的試験を受験していた疑義(以下、試験体に関する疑義の件)についても、併せて調査を行いました。
(2)委員会の構成
委員長 矢田 悠 弁護士(ひふみ総合法律事務所)
委員 伊藤 菜々子 弁護士(岩田合同法律事務所)
委員 吉田 可保里 弁護士(T&Tパートナーズ法律事務所)
本調査委員会は、建築物の耐火構造や特定防火設備の公的試験に造詣の深い、東京理科大学研究推進機構総合研究院火災科学研究センター教授である池田憲一氏を技術アドバイザーとして選任し、専門的な観点からの助言を得ました。また、本調査の補助者として、森・濱田松本法律事務所、ひふみ総合法律事務所及び岩田合同法律事務所の弁護士(合計9名)を選任しました。
(3)調査期間
2023年8月31日から2024年3月29日まで
(4)調査の方法
・関連する資料の分析
・弊社の役職員及び元役職員合計37名に対し、合計45回のインタビュー
・デジタル・フォレンジック
・弊社の全ての役職員を対象としたホットラインの設置
2 本調査の結果判明した事実
(1)認定範囲誤認の件について
本調査の結果、2008年当時、本件ドアの改修すべき範囲の検討を担当していた複数の従業員が、本件不合格3区分に該当する本件ドアの改修の必要性を認識しながらも、改修を行わなくてもよいとの結論を導くため、2008年大臣認定の範囲に本件不合格3区分が含まれており、国土交通省から改修不要であるという判断を受けたと解釈して意図的に「誤認」し、いずれの区分の仕様についても改修しないという判断をしていたことが判明しました。
(2)試験体に関する疑義の件について
本調査の結果、弊社が2008年大臣認定の公的試験の際に使用した試験体の仕様のうち、「横骨や縦中骨の骨材の曲げの角度」や「試験体の扉幅及び扉高さ」などの7項目について、公的試験の申請書に定められた試験体の仕様又は販売製品の仕様から乖離する不当な調整が実施されていた又はその可能性があることが判明しました。これらの試験体の仕様の変更は、当時試験体の仕様の検討に携わっていた担当部署の複数の従業員の間で検討され、試験体の防耐火性能を向上させて公的試験に通過するために行われていました。
3 原因分析
本調査委員会より、今回の事案が発生した原因として、2008年当時の役職員において特定防火設備及び大臣認定に対する規範意識が欠如していたことや、試験体の仕様の検討に携わっていた従業員が大臣認定の再取得に向けた社内のプレッシャーを受けていたこと、大臣認定のプロセスにおけるチェック体制や従業員の教育及び教育体制等に不備があったことについて、指摘を受けました。
また、本調査委員会より、今回の事案が早期発見に至らなかった原因として、問題が発生した場合の自浄作用の不足や、関連部署の連携不足による今回の事案を発見するための重要な端緒の見逃しを指摘されました。
4 実施済みの再発防止策の評価と追加の提言
弊社は、2008年以降現在に至るまで、防火製品に関する不正等を防止するための仕組みやシステム等を導入するなど、以下のとおり今回の事案に関する一定の再発防止策を実施しております。
- 社内で整備したガイドラインに基づく公的試験で使用する試験体に関するチェック体制の構築
- 品質監査体制の整備(事業部から独立した組織である品質本部の設置等)
- 商品開発・生産プロセスにおけるチェック体制の構築
- 受注・販売プロセスで大臣認定不適合を検知・排除する複数のシステム等の構築
- 役職員に対する防火商品・品質保証に関する教育・支援体制等の整備
- サプライチェーンの管理・教育体制の構築
- 従業員の心理的安全性を高めること等を目的とした各種の人事関連制度の導入
本調査委員会からは、これまでに実施してきた複層的なチェック体制や品質監査体制の構築等の各再発防止策は今回判明した事実を含め、不正防止の対策として有効に機能しているとの評価をいただきました。一方で、公的試験で使用する試験体のチェックにあたっては品質保証部門の目を入れることも検討が必要であることや、役職員に対して法令・ルールについての趣旨からの理解を浸透させることができるような教育内容をより検討することが望ましいといった、更なる改善点についてもご指摘をいただきました。また、トップからの品質・コンプライアンス重視のメッセージの継続的な発信や、役職員に対する継続的な教育・研修の実施、社内規程や内部通報制度等の見直しなど追加の再発防止策の提言を受けました。
以上
この度は、改修の対象となるお客様をはじめ、関係者の皆様に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしておりますことを、改めて心よりお詫び申し上げます。弊社は、本調査委員会による調査結果を真摯に受け止め、不正の防止とこれまで実施してきた再発防止策を徹底するとともに、提言いただいた追加の再発防止策を速やかに実行し、お客様をはじめとする関係者の皆様からの信頼の回復に全力で取り組んで参る所存です。