取締役会議長×社外監査役 座談会
「外の目」を意思決定に取り入れ適切なリスクテイクで成長を果たす
監査役会議長 社外監査役の八馬 史尚氏、社外監査役の関口 美奈氏、取締役会議長 代表取締役会長の堀 秀充が鼎談。YKK APにおける社外監査役の役割とガバナンスの透明化などについて語り合いました。
八馬 史尚 氏
味の素常務執行役員、J-オイルミルズ代表取締役社長、日本植物油協会会長、日本食品・バイオ知的財産権センター会長などを歴任。現在はセブン&アイ・ホールディングスやSUBARUの社外取締役も務める。
関口 美奈 氏
国内外の大手会計事務所を経て、リゾナンシア合同会社を設立し、エネルギーに関する理解促進を図る活動を展開。現在は五洋建設社外取締役、国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 非常勤監事などを兼任。
堀 秀充
1981年に吉田工業(現 YKK)入社。1989~2006年、米国勤務。2006年に帰国して以降、YKK AP執行役員経営企画室長、取締役上席常務事業本部などを経て、2011年~2023年3月、代表取締役社長を務める。2023年4月より現職。
社外監査役が「外の目」として機能
安心してリスクテイクできるよう助言
2024年、YKK APは初めて社外取締役(井上智子氏・日野自動車常勤監査役)を招きました。八馬さん、関口さんには2023年から社外監査役を務めていただいています。経験や知識を生かし、社外の方の目線から見た率直な意見を伝えていただいています。
私自身も、これまで経営者として社外監査役の方に助けてもらったことが多々あります。内部だけで経営していると気づかないことは意外にあります。外の立場だからこそ見えること、言えることもあるものです。
監査役に登用いただく際、「『外の世界では何が普通で何が普通ではないか』の意見がほしい」というお話がありました。「外の目」として機能することが重要と認識しています。
お二人には常に有益な発言を数多くいただいています。特にリスクに関して、「こういう見地からの検討が不足している」と指摘していただけるのがありがたいですね。
今、経営者はどんどんリスクを取って前に進むべき環境にあります。ただその時、押さえなくてはならないポイントがあります。社会で起きる問題の多くは、風通しの悪さ、社内の常識と世間の常識とのギャップ、情報流出などが要因です。企業価値を毀損しかねないこれらのポイントを押さえ、経営の皆さんが安心して正しく適切にリスクテイクしながら前に進めるよう、アドバイスをしたいと考えています。
上場企業の社外監査役は少数株主やベンダー、従業員ら多様なステークホルダーを代表する立場で経営に対しての意見を述べます。YKK APは非上場企業ではありますが、私は上場企業のガバナンスを意識し、同様の視点で発言するようにしています。
社会情勢や気候変動など企業を取り巻くマクロ環境が大きく変化する中、正しくあり続けながら次の成長に向かうのは大変難しいことです。YKK APには独自の強みを保ちながら、非上場のガバナンス優良企業をめざしてほしいと思います。
ガバナンス透明化のためにまず情報を把握
重要な議事を見極め審議の時間を取る
YKK APは窓販売の国内シェアがトップになり、次の成長に向け、海外を含む新しい領域に進出しようと積極的に提携や買収の検討を進めています。人員配置や情報が不足し、お二人には“バタバタしている”と見えたかもしれません。
YKK APは昨年トップ交代しました。新たなリーダーシップを確立し、推進力を持って動く体制を構築しつつあるところです。この体制は一朝一夕にできるものではなく、十分な準備ができていない状態でも進むべきだったと思います。
成長に向けて積極的に動く姿をステークホルダーに発信し、ガバナンスを透明化するためにも、まずは社内の情報把握が重要だと考えています。
コミュニケーションやエスカレーションを強化し、社内外で起きていることがきちんと経営陣の耳に適時に届く仕組みが必要ですね。YKK APは今、データの一元化に取り組んでいますが、まさに業務の状況がわかるシステム体制の構築も重要です。
取締役会では限られた時間の中で、多くの事項を審議・検討する必要があります。取締役会に提出される資料については、専門用語や社内の略語を使うことなく、皆が理解しやすい内容にまとめるよう指示しています。そして、会社の根幹となる議題に十分な審議の時間を充てられるよう、取締役会の位置付けについて今一度再定義したいと考えています。今後、実効性評価の実施も検討します。
取締役会での議事はM&A、設備投資、サクセッションプラン、グローバリゼーション、システムなどたくさんあります。決議すべき本当に重要なことを見極め、できるだけ審議の時間を取ることが大事です。
社外監査役が各議事の具体的な中身の判断をすることは簡単ではありません。現場の情報を得る努力をしつつも、あくまでも決議にいたるまでのプロセスを確認し、適法性、蓋然性、確からしさを担保する立場です。あとは執行の皆さんにお任せする形になります。
スピード感を保ちつつ、これからチャレンジするための効率的な仕組みをどうつくっていくかが問われます。
チャレンジ精神旺盛な風土を大事にしながら
「善の巡環」の精神をベースに成長を
これから売上高1兆円規模のリーディングカンパニーをめざす上で、留意すべきことは何でしょうか。
チャレンジ精神旺盛なことがYKK APの強みであり、その風土を大事にしていただきたいですね。私たちは大ケガに至ることがないように目を配りつつ、そのチャレンジの姿勢を応援したいと思います。
成長のため、新しい領域に進んでいく上では多様性の実現が求められます。その中で共通する価値観をつくることもまた新たなチャレンジです。企業理念がしっかりと浸透しているYKK APなら、必ず達成できると期待しています。
これから成長していくには地域的にも事業領域としても幅を広げざるを得ません。M&Aによって技術や人材を統合し、新しいYKK APへと変貌していくことになるでしょう。そこから新しい秩序も生まれてくると思います。創業以来持ち続け、YKK APのユニークネスといえる「善の巡環」の精神をベースに、社会に良いものを届けようという姿勢で成長を遂げていってほしいと思います。
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